【起業の科学に学ぶ その1】スタートアップのアイデアを検証するの巻

「起業の科学」は、その著者である田所雅之氏が、自ら日本で4回、シリコンバレーで1回、スタートアップを立ち上げてきたこととともに、企業内での新規事業開発に携わったという豊富な経験をもとに、スタートアップの成功に必要な実践的な知識を体系的にまとめたスライド集「スタートアップサイエンス2017」がベースになっています。

2017年11月6日に初版第1刷が発行されて以来、頻繁にアップデートされており、今も進化し続けている知識体系であると言えます。

本書は、時間の無いスタートアップの創業者が、いかに「失敗しないスタートアップ」を高い確率で実現できるかを、経験による実践的な裏付けとともに豊富なフレームワークを駆使して、体系的に学べるという点で優れた名著であると思います。

大学生が社会人となって企業内で新規ビジネス開発に携わるだけでなく、在学中や卒業後、すぐに起業するという選択肢が広まってきたなかで、幅広いビジネスマンにとって役に立つ知識体系であると考えます。

本書は膨大な資料を研究するとともに、多数の起業家へのインタビューから得たノウハウをまとめたものであり、著者による実践的な知見は細部にわたり密度の濃いものになっています。

目次

スタートアップの成功は、Product Market Fit(PMF)を達成できること

Product Market Fit (PMF)とは、ビジネスにおける市場の中で、顧客から熱狂的に愛される製品やサービスのことです。

要するに、どんなに技術的に優れた製品やサービスであったとしても、市場に受け入れられなければ、ビジネス的には意味がないということです。

では、市場に受け入れられるためにはどうしたら良いか、ということになりますが、これには潜在的顧客の課題や悩みを徹底的に掘り下げる必要があります。

課題や悩みを掘り起こした結果、それを解決するための質の高いソリューションがあれば、そのビジネスアイデアこそが、PMFを達成するものであると言えます。

スタートアップ成功の生命線は、局地戦で圧倒的優位をとること

テクノロジーの進化に常にアンテナを張りながら、政治、経済、社会の変化を捉え、さらにそれぞれの領域をかけ合わせながら、多角的かつマクロ的に市場の変化を予測することが重要であることがわかりました。

この時、他の誰もがまだ気付かない、これから成長性のある市場を開拓することができれば、スタートアップの成功の基礎となることは間違いありません。

また、やみくもに市場を拡大するのではなく、局地戦で圧倒的優位を目指すことが、その成功に欠かせない要素であることも理解できます。

フェイスブックがビジネスを拡大していく際、そのターゲット市場をアイビーリーグの大学に絞り、ひとつの大学で全学生の75%が登録を完了するまで、次の大学に拡げていかなかったことはその仮説を実証したものです。

スタートアップの事業計画にリーンキャンバスを活用する

スタートアップのアイデアを検証したのち、そのアイデアを実行可能な事業計画に落とし込んでいく必要があります。

「起業の科学」では、ビジネスアイデアを形にするにあたって、リーンキャンバスを作成することを推奨しています。

リーンキャンバスとはひとことで言うと、1枚の紙にまとめる事業計画書のようなもので、事業家のアッシュ・マウリャ氏が、その著書「実践リーンスタートアップ」(オライリー・ジャパン)のなかで提唱しているビジネスモデル設計手法です。

スタートアップにとって最も重要なリソースは、時間と労力です。

さまざまな不確定要素のある環境で、スタートアップのアイデアを事業計画書として形にしていくために、詳細な事業計画書を最初から策定するのでは時間と労力がかかりすぎます。

さらに緻密な事業計画書を修正するためにも、時間や労力が奪われてしまいます。

スタートアップのアイデアを最短で効率的に事業計画の形に仕上げていくために、短時間でシンプルに作成できるリーンキャンバスが提唱されているのです。

まとめ:スタートアップはタイミングと創業者チームの共通理解の継続が命

本書には著者の経験にもとづく知見が随所に散りばめられていますが、この中で特にスタートアップの成功はタイミングであるという点と、創業者チームの共通理解の継続が重要であることが印象に残りました。

リーンキャンバスの活用も、スピーディな事業計画の策定とともに、それを共通言語としてチームを同じ方向性に向かわせるという目的のためであることがわかります。

はじめに述べたとおり、本書はスタートアップの成功について膨大な労力をかけて緻密に研究した成果であるため、非常に密度の濃い読み応えのあるものになっています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

こんにちは。たかたんです。
ふと気づけば、この世に生をうけてから半世紀以上がたちました。
ほんものの「おやじ」ですね。
次の世代がより豊かな人生を送ることを願ってブログを綴っています。

コメント

コメントする

目次